ひとりも取り残さないために ~特別定額給付金の未申請者訪問のとりくみ~
八尾市の特別定額給費金の申請担当は、地域福祉部が担いました。9月議会が終わってから、あらためて担当者から報告を聞きました。あの暑さのなかで未申請者の家を一軒ずつ訪問し給付金の申請を促すなかで、福祉的な課題がうきぼりになり、今後の八尾市の施策や事業につなぎたいと話す、担当者の熱意に心動かされました。

◪未申請者をどうする?
一人10万円の特別定額給付金の申請は、8月末で締め切りました。
ひとり暮らしや介護施設に入居している高齢者、手続きが困難な人たち、情報がとりにくい人たちに給付金が届いたのかなあと心配していました。民生委員などの地域住民やケアマネージャー、高齢者あんしんセンターなどの協力があり、たくさんの人が申請できたと、のちに知りました。八尾の地域力は本当に高いと、私もそう思います。
それでも、7月なかばで全世帯の3%ほど、約3500件の未申請者が想定されていました。
◪一人も取り残さないために
コロナ感染予防で密を避けるため、市役所に申請窓口は設けませんでしたが、書き方のわからない方のための窓口を設置したところ、なんと約6000人が訪れました。手続きに必要な資料は何か、コピーの仕方もわからない人。市の通知書を読まず、まるごと頼る人。外出できず不安がつのり、久しぶりに人と話せて涙を流す人、給付金は勝手に振り込まれると思っていた人・・・。担当者の想像をこえた反応だったそうです。
それなら、窓口にも来られない人はどうしているのだろう、コロナ禍で本当に困っている人に支援が届いているのだろうか。取り残されている人がいるとしたら地域福祉部として放置できない。全世帯にアプローチできるチャンスととらえ、未申請者の家を一軒ずつ訪問しようと事業をたちあげました。
◪訪問のとりくみ
国の給付金事務費1218万6000円の範囲内の予算で、委託事業者・高齢者あんしんセンター・市の職員が手分けして訪問。訪問先で相手の方に安心していただけるよう、声かけや対応の仕方についてきめ細かくマニュアル化して共有していたことにも感心しました。
一件を何度も訪問するケースがあったようですが、そのなかで様々なむずかしい場面に直面したと言います。何に困っているのか分かれば、早速、関係部署につなげて解決できたケースもあり、人との関りを拒んだり、複合的な困難を抱えているケースもあり。いずれにしても、役所のなかだけでは見えてこない実態の一端を目の当たりにされたのではないでしょうか。今回の訪問結果をもう一度見直して、寄り添い型支援や専門的支援のあり方を探ることや市民への分かりやすい情報発信のくふうなど、自分たちが何をすべきなのか改めて考えさせられたと締めくくりました。

◪ほぼ100%の申請率よりも・・
結局、9月11日時点の集計で99.8%ほどの申請率になりました。何度訪問しても応じてもらえなかった人、入院中や海外出張などで会えなかった人などわずかな人たちが申請にはつながりませんでしたが、それでも素晴らしい数字です。それ以上に、今回の未申請者訪問を行った人たちが自分の足でまわり、見て聞いて感じたことが今後の人生や仕事にどう生かされていくのか、その方が楽しみであり期待感もあります。
事業者には若者が多かったと聞きました。将来、福祉関係の仕事に携わってもらえるかもしれません。やりがいを感じながら訪問していたという市職員にも、福祉行政の充実に向けて力を発揮してほしいです。コロナ対策ではあったけれど、「現場や生活実態から学ぶ」機会を得られたことは大きな成果であり、ピンチをチャンスにとらえ行動した担当者や関係者に敬意を表したいと思います。本当に、お疲れさまでした。